『ヒミツ』10巻  50 満たされた日々2

2024.12.10 その他

50 満たされた日々2

この1年間は、彼にとってもけっこう辛い日々だった。

恨まれっぱなしの社内改革を断行せざるをえず、

男性更年期の諸症状とも重なって、

動けない、気力が湧かない、気が重い、陰鬱、寝てばかり、

なんにも手につかない、ってしんどい毎日だった。

快活にふるまう社内では、たぶんだれも気付かなかったと思うけれど。

しかしその一方で、「もっとも充実したいま」もつづいていた。

自分が身動き取れないので、オペレーションのほとんどを

若い幹部たちにまかせてきた結果、若手リーダー層が

劇的に成長した1年でもあったから。

企業家としての最大の喜びは、次世代を育成できたこと。

3社ともに、すでに社員たち自身が、

自分たちで判断し、自分たちで回す会社へと変貌している。

冬のボーナスも、彼らが自主的に、自分たちで決めた。

今期、振るわなかった業績に比例し、

わずかな額で終わってしまったけれど、

ああいうオペレーションを許していたらこうなっちゃうよ、

って彼らは学んだ。

必要な学びの期間だった。

だからいま、会社は劇的に変わりつつある。

自分たちの意思で、自分たちの手で、

自分たちにきびしい経営をしなければならない場面もあるんだ、

って彼女たちは学んだ。

ベクトルをそろえる必要性も、経営方針が必要な理由も。

そしてなにより、これでもかこれでもかと積み上がり、

今後もひどくなる一方の試練たちに立ち向かうには、

「価値観の共有」こそがなにより重要なんだ、って学んだわ。

尊い経験たち。

得がたい学びたち。

人間やってる、根本の意義。

魂が成長した証よ。

最後に、お得な小耳ネタをひとつ。

筆者はある構想を抱いてる。

どんな構想かは、ここでは言えない。

関係者には、そのうち話す予定。

今後、給与の上昇スピードよりも、「物価+税負担」の上昇

スピードの方が恒常的に速い、というトレンドが定着していくわ。

人々の可処分所得は減る一方、ってトレンドが。

・・・すでにそうなってるじゃん、って声が聞こえてきそうだけれど、

いまは序章の入り口の第一段階の手前にすぎないの。(笑)

租税への向き合い方によって、人生が大きく変わってくる。

たぶん、かなり大きく。

まだそこまでの必要性は感じられないため、

ほとんど人々は動こうとしない。

けれど、彼は動きはじめた。

この事実を付記しておくわ。

経営者なら、ピンとくるはずだから。

来年も、また会いましょう。

ひきつづき豊かな「いま」で。