『ヒミツ』10巻  34 必要なこと7

2024.11.07 その他

34 必要なこと7

いま企業にとって、もっとも重要なことって何だと思う?

財務体質と収益性の向上よ。

そんなのあたりまえだし、いまにかぎらず

いつだってそうでしょ、って声が聞こえてきそうね。

たしかに、そう。

・・・でも、そういう意見って、円高転換の意味を

見落としていると思うの。

何度も書いてるけど、インフレ/デフレと、

好況/不況って別の話しだったでしょ。

インフレだけど不況もありえるし、

デフレだけど経済は絶好調、なんて状況もありえる。

そしてね、これらのファクターと円高/円安もまた、別の話しなの。

一般論としては、通貨安の方が国家経済全体としては

プラスに働きやすい。

通貨安政策が国際経済的には「近隣窮乏化策」と呼ばれ、

貿易相手国の犠牲を自国利益に変換するものであることは

ちょっと世界経済に詳しい人なら知ってるはず。

コロナ前までの日本は、「円安+デフレ」のおかげで、

国民たちにとっては実はそんなに悪い状況でもなかった。

デフレ下では、一般に消費者が有利。

企業たちが勝手に安値競争をしてくれるので、

ぼーっと待ってるだけで、安くていいものが買えるようになる。

賃金の実質価値も、預金の実質価値も毎年向上し、

買える量は自動的に増えてく。

失われた20年とか30年とか揶揄される割に、

国民たちの暮らしはそんなに悪いものではなかったのよ。

円高転換するとね、基本的には逆の現象が起こる。

目先はトランプ旋風で円安だけれど、ご祝儀相場はじき終わるわ。

円高は不況を誘発しやすい。

しかも次の不況は、金融マーケットや大型不動産の活況、

とセットでやってくる。

持たざる者たちへの不況と、持てる者たちへの好況が同時に来るの。

そして、中小企業たちのさらなる倒産と、

グローバル大手のしぶとい高収益化もまた、並行して進んでいくわ。

いい?

多少おこぼれで給料が上がったとしても、

株や大型不動産がバブル化しても、

自分が勤めている会社が倒産しちゃったら、意味ないでしょ?

円高で輸入物価が下がり、生活は少し楽になるかもしれないけれど、

そもそも働き口がなくなっちゃたら、元も子もない。

いま財務状況が悪い会社、いま収益力が低い中小は、

円高転換が本格化していく次のフェーズでは、

確実に、モーレツに淘汰されていっちゃうのよ。

円高になるとインバウンド需要も急減するから、

浮かれている旅行業界も要注意。

円高なんてぜんぜん気にならない富裕層以外の需要は、

急速にしぼんでいくわ。

当社が採ってる深遠な戦略の意味、あなたなら理解できるはずよ。

いまこのタイミングで、財務体質と収益性を向上させることは、

1丁目1番地の最重要課題だった。

それができていない中小は、次には進めない