『ヒミツ』10巻 32 必要なこと5
32 必要なこと5
少し、距離を取ってみたら?
直接かかわってばかりだと、辛いでしょ。
本人が変わろうと決心しないかぎり変わらないんだから、
ヤキモキしても無駄。
あなたにできるのは提案までであり、
採用するかどうかは本人が決めること。
過干渉は権利の侵害にあたるし、なによりあなた自身が疲弊してしまう。
適度に放っとくのが吉。
ただし、教育上必要なことはまた別にあるから注意して。
子がお菓子をほしがるからって、夕食前に大量に食べさせると、
晩ご飯が食べられなくなる。
教育上必要なことと、子の自決権のバランスへの配慮は、
各ご家庭で親が個別に判断するしかない。
それは、企業でも同じ。
社員教育上の必要性と、社員の自決権のバランスは、
各企業でリーダーが個別に判断していくしかない。
多いのよ、きびしく「NO」と言えない上司って。
筆者もその一人だった。
みなの自決権を尊重し、自由を放任レベルまで認めることで、
社内のあちこちにブラックボックスが生じるようになっていった。
ブラックボックスはヌシの住処。
社長でさえ口出しできない帝国が社内のあちこちに建国され、
自治の名のもとに専横のかぎりが尽くされる。
若手は育たず、業務の効率化も最適化も進まず、
改善を唱える者はみな「出すぎた杭」にされてしまう。
それが、去年までの当社だった。
家庭も同じよ。
親がNOと言えない場合、家でも似たことが起こる。
愛情と従属を混同した親の姿勢は、<権利意識の肥大化>
というモンスターを、子の内面にはぐくんでしまうの。
筆者の会社がそうであったように、将来、大きな代償が必要になる。
・・・でも、筆者はだからダメだとは考えていない。
それもまた必要だったから、その親子には必要な経験たちがあったから、
その家庭はそうなっている。
彼はそう思っているわ。
会社の例でいうと、あたらしく経営の中心となりつつある
若手のリーダーたちにとって、それはなにより必要な経験だったの。
リーダーが社員にきびしく「NO」と言えない場合、
こうなっちゃうよ、って経験が。