『ヒミツ』10巻 12 Dance with 4
12 Dance with 4
ダンスのヒミツ、ちょっと見えてきた?
逆方向からも、見ておきましょうか。
ダンスをもっとも強力に無効化する方法って、なんだと思う?
義務化、よ。
まず、「一人当たり、毎月100万円の粗利」「契約5本必達」って感じに、
具体的なノルマを数字や金額で設定する。
そして、週次で確認しては未達を指摘し、達成を強く求めていく。
資本主義社会では、一般的に行われているやり方ね。
個人なのか、チームなのか、全社なのか、企業によって細部は異なるけれど、
基本形はみな同じ。
「義務」は他人軸。
方向性も、基準も、ゴールも他人が決める。
結果、寄り道は許されなくなり、一直線に他人道を走らされる。
やらされ感満載となるため、熱くなればなるほど辛さが増し、
一致団結するほど未達の現実が容赦なく覆いかぶさってくる。
息苦しくなり、がまんが増え、しんどくなり、
殺伐ゲーム性がどんどん増していくの。
熱心なリーダーほど、こうしたワナにチーム全体を巻き込みやすい。
会社のことを考え、みんなのことを思い、
メンバー全員を幸せにしたいと願う熱いリーダーほど、
真逆の方向にみなを引っ張っていってしまうのよ。
・・・でもね、こうしたことは、
身をもって経験してみないとわからない。
メンバーもリーダーも、実際に巻き込まれてみないと、
腹落ちしないのよ。
そうならないよう配慮されているありがたみが分らず、
当然、感謝の気持ちも湧いてこない。
だから、漫然とあぐらをかきはじめる。
被害者たちは脳内妄想を膨らませていくし、
加害者たちはヌシ性を強めていくわ。
かくして、組織全体が自滅へ向かってまっしぐら。
あなたなら、もうこのメカニズムは理解できるわね。
なにごとも、バランスが大切。
ゼロだと組織が締まらず、競争に負けて倒産してしまう。
けれど、強すぎるとドツボ。
このあたりのさじ加減こそ、リーダーの腕の見せ所。
ダンスの技量が試されるのよ。