『ヒミツ』第9巻 27 進捗 04
27 進捗 04
これからね、生活インフラの価格はどんどん上がっていく。
安価で安定したエネルギー源(原子力発電や火力発電)は捨てられ、
なぜか、高価で不安定な再生エネルギーへと
世界は強制シフトさせられていくわ。
なぜかたまたま偶然にも、貿易の大動脈は今後も寸断されたままであり、
なぜかたまたま偶然にも、ドライバーの残業規制もこのタイミングではじまり、
国民たちの暮らしに直結するものほど、
なぜかみるみる値が上がっていくの。
特にまだ所得総額が低い若い人たちは苦しくなり、
自分たちが生きてくだけで精一杯、結婚なんてむり、
まして子をもうけて育てていくなんてとうてい不可能、
ってぐあいに異次元の少子化は加速していく。
もちろん、増税に次ぐ増税で、加速はさらに加速させられる。
国民が直面していく問題たちに限定するなら、
偶然の産物なんてなにもないわ。
すべてに原因があり、すべてに帰結したところの結果がある。
あきらかな相関関係と、あきらかな因果関係がね。
それらはみな、特定の意思の発露。
背後には、《明確な意図》があるのよ。
けれど、思考を停止した国民たちには、この関係性が見えない。
容赦なく、着々と進められていく「進捗」がまったく見えないの。
ただなんとなく苦しいなって感じはするけれど、
その閉塞感は未来にも世界全体にも投射されたりしない。
いまだけ、自分だけ、目の前のあの人が悪いだけ。
各自の自決権は尊重されるため、筆者はこういう人々について、
なにかを言える立場にない。
いまの彼にできるは、「関わらない」という選択だけ。
彼は、もう関わらないことにしたの。
これまで、彼なりの自己犠牲(株主ゆえ当然権利を持っているのに、
何十年も配当は受け取らずに、余剰利益はほとんど社員に還元してきた等)と、
彼なりの無条件の愛(勤務時間中の読書会、朝の勉強時間、週休3日化等々)で、
彼なりのアプローチは十分にやってきた。
でも、それを有効活用しようともしなければ、そもそも感謝すらしない
人たちがいるのもまた事実。
「意味ないな」って、彼は判断せざるをえなかったの。
彼は、社会の構造変化やその方向性が見える人々とだけ付き合っていく。
自助努力をする人々と、自ら変わろうとする人々とだけ。
彼自身、自分の波動にふさわしい場所へと移動をはじめているの。