『ヒミツ』第8巻 50 あなたの変化2
50 あなたの変化2
筆者は、古い映画を見るのが好き。
エンタメ業界がおかしなエネルギーに乗っ取られる前の、
たのしく、美しく、時に悲しく、世知辛く、
人間や世界への洞察を、鋭くも、しかしおおらかに歌い上げる作品が多いから。
見ていて、気持ちがいいの。
素直に主人公に感情移入して、別の人生を疑似体験できる。
若いころのトム・ハンクスは、なかなかイケメンだった。
まだ少女の残り香が漂う、メグ・ライアンもいい感じ。
『めぐり逢えたら』を見ると、人類って昔からこうやって、
いろんなメッセージを受け取ってたんだな、って思う。
いろんなシーンに、しれっと紛れ込んでる伝言の数々に、
あなたなら気づけるはずよ。
最新作、『きっとそれは愛じゃない』もまた、そうした作品の一つ。
商業的にはあまり成功していないみたいだけれど、
筆者はまちがいなく名作のひとつと考えている。
人は、自分でやったと思っている。
特に上位層、一般の人よりも多くの権威や富や名声をもっていたり、
脳の物理配線や、運動能力や各種センスに恵まれていて、
各分野でそれをいかんなく発揮している人々は、
その優位性を、自分が優位に立つために使いたがる。
感謝の気持ちを持つ人たちは、ちょっとちがう。
自分を「水路」と考えているの。
それは、自分を通して行われただけだ、って。
自分はより大きななにかの一部であり、自分が行ったことは、
その「大いなるなにか」が成した自己表現=創作活動なんだ、って。
電車で席を譲ったら、「やさしが」が創出された。
さりげなく1冊の本を手渡したのなら、「愛」が表現された。
あなたが反応せず聞き流すことができたとき、「許し」が執り行われた。
こうした自覚を持つ人々は、スムーズに地球2.0へと移行していける。
人間ゆえ、ひきつづき凸凹はある。
損得も、愛憎も、ちぐはぐも、ドタバタも。
けれど、あなたは「愛の水路」。
人々に、なにかを運んでいく、大いなる悠久の流れ。
なにを運ぶかは、あなたが決めていい。
毎回でなくていいし、ときによどんだって問題ない。
けれど、それはあなたによって届けられる。
映画作品がそうであったように、あなた自身が『作品』なの。
あなたの生き方そのものが、「伝言」なのよ。
それは、ちゃんと伝わっているから大丈夫。
評価とか、称賛とか、いいねボタンなんて、関係ない。
個々のあなたが表現した貴重なメッセージの数々はね、
例外なく、ささいなものもすべて、失われることなく、永遠に、
「大いなる悠久の流れ」の中に刻み込まれていくのよ。
たとえば、あなたが通りで友達を見つけたので、
合図に右手を上げたとしましょう。
あなたに当たった光子の一部は反射され、友達の網膜に届く。
けど、別の一部は上の方にも反射され、大気圏を突き抜けていく。
光子に質量はないから、減速されることもなく、
「あなたが手を挙げた状態を写した光子たち」は、
光速を維持したまま宇宙空間を飛び続けるの。
なにか別の物質に当たって遮られないかぎり、永遠に。
この宇宙の中で、一度でも発された言葉は、永遠に消えない。
一度でも行われた行為は、決して失われない。
一度でも生きたことのある生は、死ぬことはない。
だれも見ていなくても、だれにも気づかれなくても、
だれからも評価されなくても、あなたは愛の水路。
あなたを通して、それはなされつづける。
それが、生きる、ということ。