『ヒミツ』第7巻 47 ダブル・ボディ4
47 ダブル・ボディ4
格差が大きい場合、「平均」は上位層が引き上げちゃうので、
中央値とはずいぶん離れた数字が出やすくなる。
でも、格差がさらに拡大すると、「中央値」ですら恵まれた数字、
その下には膨大な数のひどい状況の人々が生じることになる。
一方には、貧困にあえぐ苦労の多い人生がある。
他方には、続々と夢が叶う豊かな生き方が。
もし、自由に選べるのだとしたら、あなたはどちらを選ぶ?
みな、やむをえずそうなっているわけで、
本人も望んでそうしてるわけじゃない、
自力では解決できない問題もいっぱいある、という。
目を三角にして。
筆者は言いたい。
「あなたの、その肉体からはみ出しているエネルギー体が
寂しそうに震えてますよ」って。
そのエネルギー体は、「もっと生かして、もっと大事にして、
もっと許して、もっと愛して」って自分を見つめてる。
肉体側のあなたを。
人はね、全員がダブル・ボディをもっているの。
例外はない。
全員にもれなく、確実に、内なる天才が同居している。
完全で、優美で、この上なく価値の高い「魂」が。
肉体からはみ出したそのエネルギー体は、
あたらしい地球さんと仲良し。
本来ならいっしょに遊び、ともに人生をエンジョイしたい、
と考えている。
でも、あなたが阻んでる。
みな他人が悪いという。
会社が悪い、上司が悪い、社会が悪い、制度が悪い、
あの人が、この人が・・・・って。
そうじゃないの。
阻んでるのは、あなた。
加害者を創造しているのは、あなた自身なのよ。
筆者は先日、『暗殺の森』という映画を観た。
50年以上前の、古いイタリア映画よ。
ふつうになりたい、と願う男の物語。
彼には妻も子もいたけれど、同時に、同性愛の傾向もあった。
そして少年時代、彼をレイプしようとした男を
あやまって殺してしまったという、トラウマも秘めている。
カトリックの影響力が強い大戦前夜のイタリアでは、
同性愛はかなりのタブー。
2つも「生の暗部」を抱え込んでいる男は「ふつう」に焦がれ、
多くの人と同じように「正常」な人生を送りたいと願うけれど、
屈曲した自分の心が自分を縛り、それを許さない。
あらゆる選択がマイナス方向へ作用し、
ファシストの党へ入党し、秘密警察に自ら進んでなり、
暗殺にまで関与するように。
ナチスドイツと同盟を結んでいたイタリアにおいて、
当時、「ふつう」とはファシズムを信奉する、ということだったから。
当然、悲惨な人生に。
ラストシーンで歩きながら、主人公は
少年を誘惑する初老の男性に出会う。
そして気がつく。
あのときの男だ。
殺したと思っていた男は、死んでなどいなかった。
ケガを負い、気を失ったにすぎななかったんだ、って。
主人公は愕然とする。
何十年間も自分を苦しめ、
自分をがんじがらめに縛りつけていた「生の暗部」は
自分の思い込みにすぎなかったんだ、って。
筆者は、鋭く切り取られ、
見事に映像化された人生の本質について、
監督の非凡な技量に感嘆するとともに、
人間そのものについても、
ある種のカタルシスを感じていたわ。
そうなんだよなぁ、50年前のこの映画と変わらんなぁ、
たぶんこれからもなぁ、、、、って。
あの主人公は、「ありのままの自分」を許しただろうか?
多数派と異なる性向があっても、自分を受け入れることができただろうか?
「ふつう」なんてない。
ひとくくりにされた大衆もまた、一人一人異なる個性を持ち、
めいめいが「ふつう」から離れてはいけない、と自分を縛ってる
ありもしない「ふつう」であろうと、もがく。
ダブルのボディは、両方とも泣いてるよ。