『ヒミツ』第7巻 37 変わりゆくものたち3
37 変わりゆくものたち3
すでに変化ははじまっている。
若い世代を中心にね。
これまで使われていなかったDNAの発現がはじまっていくの。
一見すると、なにも変わらない。
たぶん、大人たちの多くは気がつかないわ。
ふだんどおりの彼女だから。
いつもの彼だから。
わが子でさえ、おそらく親たちは感知できない。
最初は、ほんのちょっとした変化なの。
しかも、ほぼ内面的な。
だから、本人以外には知覚されえない。
少しだけ、小幸せが増える。
ちょっとニヤっとする瞬間が増す。
なぜなら、予想通りだったから。
運転していると、なんとなく入ってきそうだなと思ったので、
少し前の車と距離をとった。
するとその瞬間、隣のレーンから急な割り込みが。
斜め後方はほぼ視角のはずだから、
同じ車間距離のままだったらけっこうヒヤリってしたかも。
今すぐ出発したほうがいいなと感じたので、
身支度もあわただしく出かけたら、ちょうどそこから工事規制がはじまり、
後の車たちは渋滞に巻き込まれる結果に。
ふとメニューで目についた、ふだんは食べないゴルゴンゾーラの
クリームパスタを頼んだら、想像以上に絶品だった。
「欧州から昨日入ってきたばかりなんですよ、
この受賞チーズ」って、店員さんが微笑んでくれたとか。
そういう、小幸せやミニラッキーが頻発するようになる。
本人だけにわかる、「ビンゴ」とともにね。
前にも書いたけど、彼らは戦士なのよ。
彼女たちは、地球と両親を守るために時間差で生まれてきたの。
親と同世代、たとえば兄弟とか従妹とかで生まれてくると、
自分も時代に脳を洗われてしまい、身動きが取れなくなる。
だから、地球の基調波動が上昇するのを待ってから、
このタイミングであなたの近くに転生してきたのよ。
彼らは、ラットのレースには参加しない。
出世や稼ぎに執着せず、
自分なりの趣味や自分の時間を大切にする。
アルコールはあまり飲まない。
スポーツカーやバイクで飛ばすより、徒歩で山に登る方が好き。
直観が鋭い。
支配や搾取からは、本能的に距離を取る。
あくまでマイペース。
家族に一人そういう人物がいると、家庭はずいぶん変わる。
部署に一人そういう人物がいると、チームの雰囲気は変化する。
思い通りに動かない彼らを見て、おじさん/おばさんたちは
イライラするかもしれないけれど、筋違いよ。
彼女たちは、ネガティブ方向の因果律から離れようとしているの。
スパイラルにからめとられ、もっとがんばって、
さらに努力して、がまんしながらだと実現しえない、
軽やかな自己実現を果たそうとしている。
彼が起点となり、チームが変わりはじめる。
チームが起点となり、会社が変わりはじめる。
彼女をきっかけにして、親は学校や地域社会との関わり方を
見直しはじめる。
子がいわゆる出世秀才コースから離れるほどに、
実は家族のきずなも小幸せも増していく。
自分が実際に体験してみないと感じ取れない変化。
そうやって、そこかしこに、あたらしいユニット2が
誕生していくの。
思い出す人々が、ね。