『ヒミツ』第7巻 31 ユニット0

2023.11.02 その他

31 ユニット0

あなたは、あななたたち。

彼も彼女も、みなあなた。

あなたの分身たちであり、あなたも彼ら/彼女たちの分身。

みなで1つのユニットを形成している。

ユニット0よ。

人間関係の、社会活動の、魂の修練の、生命の進化の、

すべての基本となる単位。

「理想の人」がいるんじゃなかった。

理想をめざして、「いっしょに走る人たち」がいるだけだった。

会社でも、家庭でも、サークルでも、学校でも。

あなたも、仲間たちも、傍観者たちも、自らの成長を

このユニットに託しているの。

時期により、場面により、メンバーは入れ替わる。

途中から入る人もいれば、出ていく人も。

でも、だいたい半径10m以内にいるメンツは、

ある程度一定しているはずよ。

それが、あなたのユニット0。

みなで考え、話し、ときにはぶつかり、ときには涙し、

ときには笑いって、進化の最小単位をともに歩んでいる。

いまいるこのメンツでやるから、意味がある。

いつものこの人たちこそが、ドリームチーム。

あなた専属の、ユニット0。

被害者になったり、加害者になったり、ひどいこと言ったり、

キツいこと言われたり、それぞれの脳内妄想のおかげで

きわめてバラエティに富む劇がそこかしこで展開される。

ユニット0は、地球上でもっとも臨場感のある劇場。

あなたにとっては、人生そのもの。

その生々しさ、えぐいまでのリアリティーはハンパない。

もう没入感MAXのはずよ。

・・・でも、正体はね、あの音声を消したTV。

2次元平面に、色のついたドットが光っては消えてるだけ。

画素は移動なんかしないでしょう。

現れては消え、濃くなってみては薄くなり、って

点滅がただ生起してるだけ。

脳が、パルス化されたドット情報を再構成し、

臨場感を付加して、「あたな専用の劇」に仕立て直してる。

あなたは、劇場「ユニット0」の支配人なんだから、

ライトの当たり具合を調整し、ボリュームを上下させ、

室温や湿度を自在に管理できる。

没入感の調整なんて、ほんらいはお手の物。

上演中にアドリブ入れさせたり、役者を入れ替えてみたり、

シナリオを変更したりもできるのよ、ほんとうは。

だって、そこにあるのはただの画素の点滅なんだから。

人間という種族はね、それを空間エネルギーの物質化 ↔ 非物質化、

というオペレーションを通して行っているの。

意識の力で、物理的に、3Dで。

脳内のビット情報の処理なんて、お茶の子さいさい

上演中の劇が刑事ドラマだとしたら、すべてのシナリオを描き、

裏で登場人物たちを動かしていた真犯人は、あなた自身なの。

そう、あなたが犯人。