『ヒミツ』第5巻 15 選択の時5
15 選択の時5
値上げって、むつかしい。
インフレなんだから、ハイそうですね、ってはならないの。
B to Bであれ、公共セクターであれ、最終的に費用を
負担するのは国民たちだけれど、一般に、
給与の伸びよりも物価上昇の方が速い。
いっそうサイフの紐をしぼるようになる。
支出先には、「非常にシビアな選択圧」がかかっていくわ。
すると、次のような現象が発生するの。
①市場支配力の強い「強者」は、無事値上げを勝ち取る
②市場支配力の弱い「弱者」は、値上げに失敗し業績を悪化させていくか、
そもそも値上げできずに業績が悪化する
そう、優勝劣敗が加速していく。
強者はますます強くなり、市場支配力を高めていく。
それが、さらなる怒涛の値上げ攻勢につながっていく。
企業は基本、「利益の最大化」こそがミッションなので、
それは合理的かつ合目的的な行為。
世界中どの国でも、どんな産業分野でも、一握りの巨大企業が
その市場を独占&支配する「強者総取り構造」となっていく。
そして、それがさらなる値上げの呼び水となり、、、、って。
これが何を意味するか、想像つくでしょ?
じゃあ、「強者」になれなかった企業たちは、どうなる?
彼らの多くは、「企業間カツアゲ」に走るしかない。
自分より立場の弱い「取引先」を食い物にするの。
仕入れ元に値下げを迫る、外注先にダンピングを求める。
応じないなら取引止めるぞ、ってね。
当然、やられた側の企業は、相対的に自分より弱い立場の
取引先に、同じことをするしかない。
そしてそれは、さらに弱い立場の、、、って「共食いスパイラル」が
回り出すのよ。
業界全体で、「悲惨な殺伐ゲーム」がはじまっていくの。
みんながみんな、めぐりめぐって、自分の首を絞め合うゲーム。
タコたちが自分の足を喰い合うゲーム。
そしてね、「取引先」には従業員たちも含まれる、って
ことを忘れないで。
従業員を搾取することでしか生き残れない企業たちと、
そうした企業しか働き場所のない人たちが、
自社内でも、自社外でも、「悲惨な殺伐ゲーム」を深めていくわ。
・給料はあまり上がらず、生活はますます苦しくなる
・会社からは、強く「利益」を求められる
・あなたが、相手先企業に値下げを迫る
・あなたが、部下をより長時間働かせて搾取する
・あなたが、だれかの首を切る
・あなたが、だれかに未払い残業を押し付ける
あなた自身が、その主人公になっていくかもしれないのよ。
これが、「スーパーレッドオーシャン」の中身。
選択を迫られる、って意味わかるでしょ。
必要なのは、選択というより「決意」なのかもしれない。