『ヒミツ』第4巻 34 二人三脚3
2023.02.08
その他
34 二人三脚3
いい?
やさしくて冷たい人もいれば、きびしくて温かい人もいる。
理解ある内股膏薬(うちまたごうやく)もいれば、群れない同志だっている。
でもね、いろんな人たちが全体として相互に学び合っているのであって、
一方がよくて他方がダメ、ってことじゃないの。
短絡的に優劣をつけたり、レッテルを貼って決めつけないで。
たしかに、被害を感じることがあるかもしれない。
あるいは、こうしたらもっとよくなるのに、
あなたの提案を受け入れないなんて腹立たしいとか、
逆に自分の非力さや人気のなさを痛感させられ、
みじめな気分になることがあるかもしれない。
でもね、こう考えてほしい。
あなたは、彼女の人生の改善役なんかじゃないの。
あなたの提案は、改善薬でもない。
良い/悪いって、客観的な尺度があるわけじゃなかったでしょ。
あるのは、「その人が心地よく感じるか」「その人が惹かれるか」という基準。
ひらたくいうと、好き/嫌いよ。
惹かれるならその人はやるだろうし、惹かれないならやらないでしょう。
好きなことには触手を伸ばすし、嫌いなことは避けるはず。
困難なことでも、その人がぜひやってみたいと思うのであれば、
ほっておいても勝手にはじめちゃうんじゃないかしら。
あなたも、マイケルソン干渉計を使って、
半導体レーザーのバックグランド・コヒーレント長を精密計測しようよ、
科学に多大な貢献ができるからって力説されても、興味ないでしょ。(笑)
「改善役」も「改善薬」も、要するに解釈。
彼女の信念体系の中で、どう位置づけられているか。
人それぞれに、意義も、重みづけも、理由も、魅力も、
なにもかもが全部異なる。
表現はあなたのもの。
解釈は彼女のもの。
他人のものに、手出ししないで。