『ヒミツ』第4巻 11ミニマル大作戦3

2023.01.17 その他

『ヒミツ』第4巻 11ミニマル大作戦2

他方で、乗ってこない人々もいた。

顔色が悪く、目を三角にした人々だ。

人はみな、自分がいいと思うことを他人にもさせようとしがちだが、

「押し付けないように」と、ケイコは仲間に釘を刺していた。

人にはそれぞれ、その人に固有のタイミングやルートがある。

なにを経験したいかは各人の自由であり、当然に、

各人の自決権は尊重されるべきだ。

たとえ、不幸になる権利、自滅する自由、

貧困への片道切符にしか見えないとしても、

それでもその人が自分で選択した生き方であり、

他人にできるのは提案やお誘いまで。

それ以上の介入は越権行為である。

ケイコはそう考えていた。

それは仕事上の必要性、結果を出すための業務指示、

チーム作りのための教育活動とは別のものだ。

会社は利益を出し続けていないと、存続できない。

儲かっていないと、社員たちを豊かにできない。

そのために必要な勤務時間中の介入は、大いにやっていい。

グレーゾーンも多いので一律の線引きは難しいのだが、

そこのさじ加減こそリーダーの役割であり、

ケイコのような中間管理職の存在意義だ、と思っていた。

だからケイコの<ミニマル大作戦>では、やりたい人がやる、

やりたくない人はやらないでいい、が基本だ。

ケイコたちが会社を活性化した恩恵は不参加どころか、

場合によっては積極的に妨害活動をする人々にも平等に分け与えられた。

むろん、収益団体なので貢献度に応じて差はつくのだけれど、

反対派だから追い出すとか、仲間外れにする、なんてことはなかった。

不参加の人々にも役割があり、

その人なりに得意なことで貢献してくれればいい。

ケイコはそう思っていた。