『ヒミツ』第4巻 8グレート・リセット4
2023.01.14
その他
『ヒミツ』第4巻 8グレート・リセット4
他方、ケイコには確信もあった。
わが国の産業競争力は、世界的に見て十分高いレベルにある。
教育水準も高く、社会インフラの整備状況も、公衆衛生も、
世界最高とまでは言えないかもしれないけれど、十分恵まれた水準にある。
311のような大災害が起こったら、外国なら略奪や暴力の嵐があっというまに
街を飲み込んでしまうだろうに、東北では社会秩序は崩れなかった。
人々は助け合い、分かち合い、耐え、そして再起した。
戦後、物理的な焦土から復興を果たした実績もある。
数年は混乱するだろうが、経済的な焼け野原からの復活は意外に早いのでは、
と思っている。
だからケイコは、サイレント・マイノリティになる決心をした。
前もって、できることをやっておく。
理解されることをもとめず、声を大にしたりもせず、
必要なことを静かにやっていく。
そう決めた。
見渡すと、協力してくれそうな人が何人かいた。
営業部の佐藤さん、総務の新庄さん、システム部の山田さん、など。
彼女たちが同じ夢を見たとは思っていないが、少なくとも、
同調圧力に流されているようには見えなかった。
引き続き明るく大らかで、open mindedな姿勢が随所に感じられた。
やれニューノーマルだ、消毒だ、マスクだって、神経質になっていない。
ケイコの作戦はシンプルだった。